DOACの登場により以前ほどの処方量ではなくなったワーファリン。
ですが、ワーファリンでないといけない患者がいるもまだまだみえます。
ワーファリンは薬剤・食品ともに注意が必要であり、少し目を離すとすぐ増強してしまい痛い目をみた薬剤師も多いのではないでしょうか。
理由の1つとして相互作用の機序の多さが関係していると思います。
そこで今回は処方頻度の多さ、相互作用の多さ、注意度の高さから「抗菌薬」との相互作用について書きましたのでぜひ読んでみてください。
目次
ワーファリンの基本情報
- 代謝酵素:多数あり(主にCYP2C9)
- アルブミン結合率:90〜99%
- ビタミンKを多量に含む食物に注意
- 作用機序:ビタミンK還元サイクル阻害する
今回の内容で必要となってくる情報は上記内容です。
相互作用の種類
腸内細菌の減少
抗菌薬といえばこれですね。
ワーファリンの作用点であるビタミンKはヒトでは作り出すことができないため、腸内細菌が作ったものをいただいています。
そのため抗菌薬によって腸内細菌が死滅してしまうとビタミンKが作ることができなくなりビタミンK依存性血液凝固因子の産生が低下します。
そのため結果としてワルファリンの作用が強まります。
腸内細菌叢の変化は抗菌薬を開始して48時間以内に始まり、中止後も数週間程度にわたり起こるとされています。
そのため抗菌薬治療終了後にワーファリンの投与量が通常量に戻った際もモニタリングは必要となります。
代謝酵素の阻害
2つ目は代謝酵素の阻害です。
ワーファリンの代謝酵素を阻害することで血中濃度が増加して作用が増強されます。
抗菌薬で代謝酵素を阻害するものは下記の4種類が代表的です。
- マクロライド系(CYP3A4)
- スルファメトキサゾール・トリメトプリム[ST合剤](CYP2C8)
- アゾール系抗真菌薬(CYP3A・2C9)
- メトロニダゾール(アルデヒド脱水素酵素)
これらはワーファリンのメインの代謝酵素ではありませんが全てPT-INRが5以上に優位に上昇したとの報告があり注意が必要な薬剤です。
特に注意が必要なのが口腔カンジダなどに使用されるフロリードゲル経口用です。
あんな見た目をしていますが添付文書では併用禁忌になっており、実際にインシデントも報告されています。
そして、ピロリ菌の除菌でも使われるメトロニダゾールとクラリスロマイシンの組み合わせも上記2点に該当する薬剤のため要注意ですね。
逆に減弱するのはCYP3A4の誘導をするリファンピシンです。
結核以外での出番があるとすれば骨感染症などの時にバイオフィルムの透過を目的として他の薬剤と併用されるため処方を見た時は頭を抱えると思います(骨感染症となると中長期投与が予想されますね・・・)。
アルブミン結合の置換
NSAIDsなどでよくみられる相互作用です。
ワーファリンは高いアルブミン結合率ではあるが親和性が低いため、アルブミン結合率の高い薬剤と併用した場合、ワーファリンの血漿中遊離濃度は増加し、抗凝固作用が増強されることがあります。
抗菌薬で代表的な高いアルブミン結合率の薬剤はテイコプラニンです。
テイコプラニンのアルブミン結合率は90%以上と高いく、ただでさえ炎症反応で通常よりアルブミンが減少している状態なのでよりワーファリンの作用を変化させることが予想されます。
遊離薬剤が多いことは効果の増強が真っ先に予想されますが、クリアランスの増加も考えなくてはなりません。
大きく低下することは考えにくいですが薬物動態的には低下の可能性も考える必要があると思います。
また、同系統薬のバンコマイシンはアルブミン結合率が低いためテイコプラニンよりはPT-INR等の変化は起こしにくいです(広域抗菌薬のため腸内細菌の減少は起こします・・・)。
ビタミンK還元サイクル阻害
セフォペラゾン/スルバクタム、セフメタゾールが該当します。
おや?さっき話さなかった?と思う人もいると思います。
ですが先程の腸内細菌の減少によるものとは少し違います。
それは N-methyl tetrazole thiol 基(NMTT 基)です。
構造式で書くと下記の場所にあります。
どの場所に作用するか可視化すると上記のようになります。
実際の役割としては、ビタミンKエポキシドを再びビタミンK(キノン型)に戻す際の酵素のビタミンKエポキシドレダクターゼを阻害することで、ビタミンK(キノン型)に戻すことができなくなり、ビタミンK還元サイクルを阻害します。
簡単にいうとワーファリンの作用の一部を持つ抗菌薬ということになります。
違っていたらごめんなさい。
まとめ
ざっくり書きましたが大きく分けて上記の4つがワーファリンと抗菌薬との相互作用で考えるべき点です。
抗菌薬を選択する上で菌種などは注意して薬剤選択されていると思いますが、上記のような点も考慮しつつ抗菌薬を決定することもいかがでしょうか?
もちろんビタミンKを投与すれば解決しますがそれでは対応できない場合が出てきたときに今回の内容を思い出していただけるととても嬉しいです。