こんにちは薬剤師のクマです。
“フォルテオ皮下注キット600μg”のバイオシミラーになる“テリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」”が2020年11月27日に発売されました。
過去にもインスリンや抗がん剤などたくさんのバイオシミラーが発売されてきましたが今回のテリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」は今までのバイオシミラーとは今回が少し異なる点があります。
そこで今回は薬剤師が知っておくべきフォルテオとバイオシミラーの違う点を3つ書きました。
また最後に私の今までの経験を踏まえてフォルテオとバイオシミラーを選択する際にどのような患者にバイオシミラーを提案するかを書いたため是非みて下さい。
目次
薬剤師が知っておくべきフォルテオと違う点3つ
薬価が違う
注射の骨粗鬆症薬は近年高額な薬剤がどんどん発売されています。
フォルテオ皮下注キット600μg 36555.00円/キット
テリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」 25643.00円/キット
4月からフォルテオの薬価が下がり1キット毎の薬価差は10912円になります。
フォルテオを使用する場合は「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」しか使う事ができない薬剤です。
具体的に書くと※1「低骨密度、既存骨折、加齢、大腿骨 頸部骨折の家族歴等の骨折の危険因子を有する患者」になります。
そのため他の薬剤に比べて自己負担が1割の高齢の骨粗鬆症患者の投与の割合が多いです。
自己負担額の差としては3割の患者で約3000円/月、1割の患者で約1000円/月の差額が出てきます。
※1テリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」添付文書https://www.mochida.co.jp/dis/txt/pdf/ter_n4a.pdf
患者説明用キットの中身が違う
テリパラチドという成分は人生で合計24ヶ月しか使用できないため先発品フォルテオの患者説明用キットはかなり手厚いです。
しかし、バイオ後続品になるテリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」の患者説明用キットはフォルテオより患者説明用キットの中に入っている品数が少ないです。
個人的に残して欲しかったものとしては「フォルテオ®️治療の旅プログラム」です。これは患者はもちろんのこと薬剤師にも嬉しいハガキです。
患者は治療経過によって達成証や修了証などモチベーションを高めてくれる資材が送付されたり電話サポートが受けることができたりします。
薬剤師はその患者がフォルテオを過去何ヶ月使用していたかがメーカーに聞くだけで確認できます(もちろん確認には患者の許可は必要になります)。
そのハガキがないと過去何らかの理由で中止してしまった人が過去何ヶ月使用していたか確認したい場合は処方元や調剤元を探して情報提供してもらう必要が出てきてしまいます。
保管方法に関してのデータ量が違う
これが1番重要ですが1番知られていない内容です。
リリーのホームページにも載っていないためあまり知られていませんが
フォルテオの患者説明用冊子には
25℃以下であれば、28日間目の投与が終わるまでの間に合計36時間までフォルテオ皮下注キットを持ち運びいただけます。
との文言があります。
このデータは残念ながら添付文書やインタビューフォームには記載がなく、患者説明用冊子しか記載されていないため知らない薬剤師が多いです。
残念ながらテリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」にはそのようなデータがありません。
そのため患者が数時間の間、常温保管してしまった場合の対処をフォルテオは薬剤師の判断でできますがテリパラチドB S皮下注射キット600μg「モチダ」はデータがないためできません。
筆者の使い分け案
私が勤務している病院は毎週のようにフォルテオを導入する患者を対象に手技や保管方法の説明を行なっています。
圧迫骨折や大腿骨近位部骨折の治療の1つとして数ヶ月間だけフォルテオを使うこともあります。
現在私が医師から相談があった場合
- 高齢や一人暮らしの方はサービスが手厚い「フォルテオ」を提案
- 自己負担額が3割の比較的若い患者や家族の手伝いを依頼できる状況の場合は「バイオシミラー」を提案
- 数ヶ月間だけの使用の場合はハガキが活用できる「フォルテオ」を提案
上記のように考えて患者のライフスタイルに合わせた提案しています。
使い分けに悩んでいる場合は参考にして下さい。
また、異なる提案方法などがあれば是非コメント欄に記載して下さい。
参考
日本バイオシミラー協会https://www.biosimilar.jp/index.html