今回はデノスマブ(商品名:プラリア、ランマーク)について説明します。
ビスホスホネートと同様に「骨密度」「椎体骨折」「非椎体骨折」「大腿骨近位部骨折」全てに対してA評価の薬剤であり使用頻度は多い薬剤です。
目次
基本情報
作用機序
破骨細胞の分化促進因子であるRANKLに特異的に結合・阻害
→破骨細胞の成熟阻害→骨吸収低下
RANKLに対して特異的に結合するモノクロナール抗体です。
用法・用量
骨粗鬆症に対しては60mgを6ヶ月に1回 皮下注射
関節リウマチに対しては60mgを6ヶ月に1回または3ヶ月に1回 皮下注射
悪性腫瘍の骨転移は120mgを毎月 皮下注射
その他
骨折治癒に対してのエビデンスはなし。
注意すべき副作用
低Ca血症
症状
低カルシウム血症が進行すると、強い痛みを伴う筋肉のけいれんが起こります。
そのほかに錯乱、抑うつ、忘れっぽくなる、唇や指や足のチクチク感などの症状が現れることもあります。
特にCcr<30ml/minの患者は注意してください。
対処法
Caの補給活性型ビタミンD3投与によってCa補給
または
デノタスチュアブル錠がデノスマブを使用している患者に使用できるためそちらを使うことが多いです。
顎骨壊死
症状
顎の骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になることです。
顎の骨が腐ると、口の中にもともと生息する細菌による感染が起こり、顎の痛み、腫れ、 膿が出るなどの症状が出現します。
リスク因子は
- 管理不良の糖尿病
- 担がん患者
- 口腔内不衛生
が大半を占めます。
対処法
口腔内を清潔に保つ。
定期的に歯科を受診し、歯ぐきの状態のチェックしてもらう。
口腔清掃、歯石の除去などを受けておくこと。
症状が出たら歯科受診をする。
デノスマブに関しては日本口腔外科学会よりポジションペーパーが出ております。
非定型大腿骨骨折
症状
脆弱性骨折とは異なる特徴を持つ骨折が起こることです。
さらに遷延治癒や偽関節を生じることもあります。
ビスホスホネート薬と同様に長期の服用がリスク因子となります。
対処法
長期投与の場合は服用薬剤の変更を提案。
治療中止後の多発性椎体骨折
これが今回の記事で1番伝えたい内容です!
プラリアは治療中止後、骨吸収が一過性に亢進し、多発性椎体骨折があらわれることがあります。
せっかくデノスマブで骨密度を上昇しても中止後に何も治療をしないと急激な骨吸収が起こり骨密度が治療前より低下してしまいます。
対策
プラリアを中止する場合は他の骨吸収抑制薬の使用になります。ですがプラリアは骨粗鬆症治療の場合は6ヶ月間効果が続きます。
そのためビスホスホネート薬などに切り替える際は低Ca血症に注意してください。
また、定期注射日にこない場合は骨密度の低下が予想されるためできるだけ早く受診を勧める必要があります。
デノタスチュアブルについて
特徴
- 2錠中にカルシウムとして610mg、天然型ビタミンD3として400IU及びマグネシウムとして30mgを含んでいます。
- カルシウムの吸収を促進する天然型ビタミンD3に加え、カルシウムの代謝に関与するマグネシウムを配合しています。
- ヨーグルト風味のチュアブル錠です。水なしでそのまま服用できます。
副作用
Milk Alkali Syndrome(ミルクアルカリ症候群)
症状通常カルシウムとアルカリの大量摂取後2~30日で高カルシウム血症と代謝性アルカローシスによる易興奮性、頭痛、めまい、嘔気・嘔吐、脱力感、筋肉痛、無気力などが症状です。
カルシウムとアルカリの大量摂取をやめなければ神経学的な異常(記憶喪失、性格の変化、嗜眠、昏迷、昏睡)が出現します。
血液データでは低Cl性代謝性アルカローシス、高カルシウム血症(11~18mg/dL)、高リン血症、血清iPTH低下、血清1,25(OH)2D低下、BUN、クレアチニン値の上昇を認めます。
慢性化すれば全身のカルシウム沈着を認めますが、結膜と角膜への沈着は比較的早期に認められます。
進行すると軟部組織、腎臓への石灰沈着が認められるようになります。
デノスマブ導入のおすすめのタイミング
- ビスホスホネートが長期使用している
- ビスホスホネートの内服が負担になっている
- テリパラチド終了後
- 骨粗鬆症骨折後で続発性骨折を早期に予防したい
もし、医師より問い合わせがあった場合は上記内容を参考に提案してはいかがでしょうか?
定期注射が重要となる薬剤ですが半年に1度の投与のためビスホスホネートと違って家での内服の難しさはありません。
定期的な通院ができる患者にはおすすめです!
前回はビスホスホネート薬について書きましたので合わせて読んでみてください。