消化管運動低下による悪心から化学療法による悪心にも使えるメトクロプラミドですが患者さんからや病棟の看護師から
「2回目を使うにはどのくらい空ければいい?」
「1日何回まで使える?」
と聞かれることがあると思います。
添付文書には
「通常成人1日7.67mg〜23.04mg(塩酸メトクロプラミドとして10〜30mg)を2〜3回に分割し、食前に投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」
としか記載されていないため判断に迷うと思います。
そこで今回はメトクロプラミドの投与間隔や上限回数について考えてみました。
目次
基本情報
作用機序
上部消化管のドパミンD2受容体拮抗作用によりアセチルコリンの遊離を促進し消化管運動の促進を行う。また、延髄に存在する化学受容体引金帯のドパミン受容体も拮抗作用も示すため中枢性・末梢性嘔吐にも効果を示す。
そのため、消化管運動低下による悪心や化学療法による悪心にも使用されます。
副作用
過量の服用による主な症状は錐体外路症状です。
発症時期は個人差がありすぐ出る場合もあれば数ヶ月後に出る場合もあります。これらは中枢性のドパミン拮抗作用が強く作用することが原因されています。
ドパミンとアセチルコリンのバランスが崩れることで錐体外路症状を発症するため、高容量になればなるほど発現しやすいです。
錐体外路症状の症状は以下の4種類があります。
急性症状としてはジストニアとアカシジアが現れやすく、長期使用による発症はジスキネジア、パーキンソニズムが現れやすいと言われています。
用法用量
添付文書(日本)
「通常成人1日7.67mg〜23.04mg(塩酸メトクロプラミドとして10〜30mg)を2〜3回に分割し、食前に投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」
と記載されており特に投与間隔に対する言及はされていませんでした。
がん診療 レジデントマニュアル
「1回20mg 1日2〜4回 経口または静注」
「錐体外路症状をモニターし、症状出現時はジフェンヒドラミン25〜50mg 経口または静注4〜6時間ごと症状改善まで使用」
「4〜6時間は間隔を空ける」
との記載があります。
がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2017年版
「使用期間の目安として4週間」
との記載あり。
添付文書(英国)
「1回10mgを1日3回まで、6時間空ければ服用可能」
とされている。
体重ベースでは「最大1日量は30mgまたは0.5mg / kg体重」が推奨されています。
海外の添付文書はJAPICで確認ができます。
腎機能低下や肝機能低下患者についても記載されているので1度確認してみてください。
その他
米国食品衛星局
「投与期間は12週間まで」とするよう注意喚起が出ています。
注射薬の投与速度
「2分以上かけてゆっくりと静注」とのデータあり。(J Perianesth Nurs.2008;23:292-9.)
まとめ
以上の内容をまとめると
「1回10mg 1日3回まで 4〜6時間空けて」
となります。
もちろん年齢、腎機能、肝機能や抗ドパミン作用を持つ併用薬(MARTAなど)にも注意し調節が必要です。
使い方の説明をする際は以上の内容を参考にしてみてください。
代替薬となるドンペリドンにも注意点はあるためうまく使い分けていきましょう。
(ドンペリドンの注意点)
血液脳関門を通過しないため錐体外路症状を起こしにくいとされているが報告例あり。
30mg以上は重篤な不整脈や心臓突然死のリスク。