骨粗鬆症のリスク因子として「てんかん」があります。
てんかん発作による転倒だけではありません。
それは骨密度の低下です。
てんかんによる骨密度低下というよりは服用している薬剤が骨密度を低下させることもあります。
実際にフェニトインやカルバマゼピンの添付文書にはこのように記載があります。
そこで今回は「抗てんかん薬と骨粗鬆症の関係」について書きました。
目次
作用機序
抗てんかん薬における骨量低下の主要な原因は
CYPの誘導
です。
CYPの誘導により肝臓での活性型VD3の異化が亢進し活性のない代謝物への変換が促進します。
そのため酵素誘導を生じると言われている
- フェニトイン
- カルバマゼピン
- フェノバルビタール
- プリミドン
は注意が必要です。
VDの流れは下記のようになります。
上記のようなことが発生し活性型VD3の低下が引き起こされた場合は
- 腸管でのCa吸収低下
- 低Ca血症
- 副甲状腺ホルモンの上昇
をきたすことが予想されます。
副甲状腺ホルモンの上昇(副甲状腺機能亢進症)では骨代謝回転が亢進し骨量が低下するため直接的に骨粗鬆症が進行します。
作用機序を考えると服用期間が長期になるほど長期にわたり活性型VD3の低下が予想されるためより骨量が減少すると予想されます。
骨粗鬆症は女性がよく進行しやすい疾患ではありますがこれらのことが起こると、女性だけではなく男性も骨粗鬆症になる恐れがありますね。
酵素誘導する薬剤を内服してもCa吸収低下、低Ca血症、副甲状腺ホルモンの上昇を起こさなかったとの報告もあるので必ず生じるわけではないので注意してください。
エルデカルシトールなどの服用もありなのでは?と思ったりしますが必ず生じるわけではないので盲目的に提案は不可能ですね・・・。
今までの話とは逆に
酵素阻害作用のあるバルプロ酸を服用している患者では骨密度の上昇や骨代謝マーカーの上昇
が報告されています。
さらに
トピラマート、ゾニサミドは炭酸脱水素酵素阻害作用があり、腎尿細管アシドーシスをきたし、二次性の骨代謝異常を生じる
ことも報告されています。
まとめ
一般的に一般人に比較し抗てんかん薬内服している患者は2〜6倍骨折しやすく、
抗てんかん薬内服している患者の38%〜60%に骨量減少や骨粗鬆症が起こると言われています。
薬剤師として日頃から薬物間相互作用は注意していると思いますがなかなか日々の業務で気が回らない事もあると思います。
まだまだ正確なメカニズムはわかっていませんが
骨密度が変化する可能性があると思うだけで今後の治療の提案ができるのではないでしょうか。
抗てんかん薬は簡単に中止することはできないので骨密度の測定を促したりする事も薬剤師として必要となると思いますのでぜひ参考にしてください。